シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
『そんなにそうじが好きなら、もっとできるように協力するわ!』

 とりあえずシナリオ通りシンデレラが持っていたバケツを取り上げ、床に水をぶちまけてこの場を切り上げる。

『ああっ!お姉様ひどい!』
『ああら。あなたのそうじのおてつだいをしてあげたのよ。いい気味だわ。あなたって親切ね。あら当然よ、おっほほほほ……』

 我ながら高笑いだけは、この五年で堂に入ってきた。
 シンデレラもシンデレラで、わざと私がぶちまけた水びたしの床の上で、スカートをぬらしながら泣きくずれてみせる。

 シンデレラにはこの後、泣きながら床の水をふく作業が残っているけど、私の今日の出番は終わり。
 いつものように《混沌(こんとん)の森》へ行く。
 
 シンデレラをいじめておきながら、シンデレラが作ってくれたお弁当を持って。
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