シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 ……役柄にかこつけて、何をやってるんだろう。

 それでも、今回はまだいい方だ。
 
 先月なんかは私の爪がシンデレラの手の甲に当たってしまった。ちゃんと確かめなかったが(確かめる勇気がなかった)、もしかしたらキズを作ってしまったかも知れない。
 あの時はもうしわけないと思う一方で、心の中に(おそ)ろしい言葉がほのかに浮かび上ったのだ。

(王子様と結ばれる幸運をつかんでいるのだから、そのくらいの傷、ガマンすればいい)

 私はあわててその思いをふうじ込めた。今の言葉をなかったことにしようとした。
 でも出来ない。一度聞こえてしまった心の声は、ムシしたくてもできない。
 
 いやな私。いやな私。いやな私。
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