シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 私が七つか八つの頃だったか、散歩の時いつもより少し遠くまで行ってみると、とある家の庭先で同い年くらいの少女が三人で遊んでいた。

 私は仲間に入りたくなり、声をかけた。

「私も一緒に遊んでもいい?」

 彼女達はニコニコして「いいわよ」と気持ちよく仲間に入れてくれた。

 彼女達のうち一人が言った。
「私は町の少女Eよ」
 
 もう一人が言った。
「私も町の少女でN」
 
 最後の一人が言った。
「私は仕立屋の娘B。お姉ちゃんがAなの」

 私は目を白黒させて聞いた。
「それは名前なの?」

 三人は可笑しそうに笑った。

「名前なわけ、ないじゃない! 名前がないからそう呼ばれてるんでしょう?」

 私は急にいつも母が言っている言葉を思い出した。

 『自慢の娘。”名有り”の子』
 
 あれはつまり、普通の人には名前がなくて、名前がある自分は特別な存在という意味だったのか。
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