シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
「それじゃあね、この本番用の(くつ)でラストシーンの一世一代(いっせいいちだい)のダンスを披露(ひろう)するために、また練習(れんしゅう)しなきゃ。(くつ)が変わると感覚(かんかく)も変わるのよ。可愛い白雪の物語をビシッと()めるためにも、失敗はゆるされないからね」
「がんばってね、(かがみ)魔女(まじょ)さん」
「ありがと。チキンとサンドイッチ、おいしかったってあんたの妹にお礼を言っておいて」
「わかったわ」

 (かがみ)魔女(まじょ)さんはエレガントに手をひらりとふって、去っていった。美しい赤い(くつ)をカッ! カッ! カッ! と鳴らして歩く後ろ姿を、未練(みれん)がましい目でグリムオオカミが見つめている。
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