シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 ちなみに魔女(まじょ)さんの言う“一世一代(いっせいいちだい)のラストシーン”とは、白雪姫を(ころ)しそこなった魔女(まじょ)さんが、真っ赤に焼けた(くつ)()いて、熱さのあまり死ぬまで(おど)り続ける、というものである。
 
 人間とは恐ろしい。よくもこんな残酷(ざんこく)なシーンを考えつくものだ。

 とはいえ、もちろんここでは魔女(まじょ)さんが本当に焼けた(くつ)()くわけではない。
 
 焼けているかのように見える靴(さっき魔女(まじょ)さんが見せてくれた美しい赤い(くつ)がそれだ)を()いて、得意のタップダンスを(おど)るのだ。

 このシーンは白雪姫ととなりの国の王子の披露宴(ひろうえん)の一場面で、物語としては悪い魔女(まじょ)が、白雪姫を(ころ)そうとした悪事(あくじ)(むく)いを受けて苦しむわけだけど、実際(じっさい)には魔女さんが得意(とくい)のダンスで、むすばれる若い二人を祝福(しゅくふく)するという、かくれた意味がこめられている。
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