シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
「…………どうして」
 涙が一粒こぼれ落ちた。

「…………ん?」
 泣いている赤ん坊をあやすように、魔女(まじょ)さんは私の背中をポン、ポン、と優しくたたき続ける。そのリズムで赤ん坊が泣きやむのとは逆に、私は(なみだ)がふつりふつりとわき出した。

「どうして、私の気持ちが、そんなに、わかるん、ですか?」
 がまんしている嗚咽(おえつ)が、言葉を不必要(ふひつよう)に切った。
「わかるとも。あんたより何年も何十年も長く女をやってきてるんだよ」

(だけど、お母さんなんて私の気持ち、全然わかってないけど……)
 そう考えてしまってから、またさらに自己嫌悪(じこけんお)におちいる。
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