シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
「私、いやな子、なんです。妹にも、しっと、するし……。お母さんにも、最近、イラっとしちゃっ……たり、して……」

 昔、二人きりでくらしていた(ころ)、お母さんは私の世界の全てで、一番好きな人で、お母さんさえそばにいれば何も(こわ)くなかった。幸せだった。

 今の家に来てからも、にくまれ役のママハハに立候補(りっこうほ)したお母さんはりっぱな人だと思っていた。

 それがいつ(ごろ)からだろう。心のどこかで(お母さん、ずるい)という気持ちがめばえたのは。

 お母さんがママハハに立候補(りっこうほ)しなければ、私がシンデレラの“意地悪な姉”になることもなかった。
 どうせ結ばれない相手なら、いっそ王子様の目にふれることもなく、遠い存在でいられた方が良かった。

 なまじ彼の愛する人(になる予定)のシンデレラの近くにいて、彼女の幸運を目の前で見せつけられるなんて。
 そのくせお母さんだけ、お父様という相手に恵まれて、あんなに大事にされて、愛されて。

 私はシンデレラの“意地悪な姉”になったせいで、王子様と、とは言わないまでも、恋人の一人だってできないのに。
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