シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 シンデレラ(いわ)く、上手く羊毛を()ることができたら、『いばら姫』に出てくる、姫が百年眠るきっかけになった糸車にかけるツム用に売りに行くのだそうだ。
 
「あなた、それまでこの家にいないでしょうに」と内心思ったが口にはしなかった。

 家事(かじ)を取りしきっているシンデレラは、わが家の経済状況(けいざいじょうきょう)を私よりもずっとちゃんと把握(はあく)している。
 あまり裕福(ゆうふく)とは言えない男爵家にありながら、ぜいたくをしている私(そういう役柄(やくがら)だからしていることではあるのだが)は何も言えなかった。

 とりあえず、そういうわけでふだんから家事(かじ)をしているためかシンデレラは女子力が高い。でもそれだけではおさまらず、何というか生命力が強い。
 生活力が高い。
 人生を楽しもうという意欲(いよく)が強い。

 私にはそんな妹がまぶしくてたまらない。
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