シンデレラのないしょ話 ~悪役令嬢だって恋をする~
 いつも通りのあっけらかんとしたシンデレラの言葉を聞きながら、私は彼女の手を取る。
 ガサガサした、アカギレだらけの手。家事(かじ)でこき使われている設定のシンデレラが、きれいな手をしていては物語に反するからと、クリームのひとつもぬることが許されていない。

 けれどすらりと伸びた指や華奢(きゃしゃ)な手の甲は、手入れさえすればさぞや美しいだろうと思われた。舞踏会(ぶとうかい)当日は真っ白なレース手袋(てぶくろ)をする予定なのだそうだ。きっとにあうだろう。

 王子様にエスコートされるのに、ふさわしい手。
 見た目も心も美しいシンデレラ。
 私の、じまんの妹。
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