イケメンアポなし訪問からピュアな恋をはじめます
 おばあちゃんが作ってくれるごはんを食べて、お風呂に入って、お布団で眠って。
 二日目の朝にも私は畳の上をごろごろ転がっては「帰りたくなーい……」とため息ばかりついていた。

「お散歩でも行って来たら?」

 優しいおばあちゃんの声が台所から聞こえる。

「うーん……」

 はいともいいえとも言えずに私は曖昧な返事をした。
 無気力という状態を存分に味わっているような気分で、お散歩すら今の私にはハードルが高い。
 
 歩いてたって、思い出すのはきっと彼のことと別れたときのあの悲しい気持ちばかりでちっとも気が晴れるとは思えないのだ。
 それよりはおばあちゃんと言葉を交わしていたり、台所から漂ってくる優しい味付けのお料理の匂いや、おばあちゃんの気配を感じて、物音を聞いていたほうが少しは傷が癒えていく気がする。
 
 「はあ……」

 何度目かわからないため息をついたときだった。

 『ピンポーン』

 と家のインターホンが鳴る。
 宅配が来るとは聞いてないし、ご近所さんかな?と思いを巡らせて体を起こした。

美里(みさと)ちゃん、おばあちゃん手が離せないからちょっと出てくれる?きっと田崎(たざき)さんだわ」
「はーい」
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