【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「ただ」
「ただ?」
「私、いろいろ抑えてきたところもありますので、もう猫を被るのはやめることにしますわ。それを見て、フィリベルトさまが良いとおっしゃるのなら、この話を承諾しても良いと思いますの。ユミルトゥスは大きな国。我が公爵家にも利益があるでしょうし……」
「リディア……」

 利益で結婚って、本当……貴族っぽいけどね。

 それでも、貴族と言うのはそういうものだ。

 私が自由にできるのは、ほんの少しのことだけ。それを理解している。

「あ、いっそ私がユミルトゥスに留学するのはどうでしょう? どんな国なのか気になりますわ。あの学園には殿下がいますし……きっと、いろいろな目で見られるでしょうし……」

 しゅんと肩を落としてみせると、お父さまは慌てたようにあたふたとしていた。

 やだ、お父さまったらこんなに可愛らしいところがあったのね。

 ……ああ、そうか、こんなふうに話すことなんて、滅多になかったものね。

 立派な王妃にならないとって、ほとんどの時間を勉強に費やしていた。まぁ、もう王妃になることはないでしょう。勉強のおかげでいろいろ身についたし、知識はきっとどこかで役立つでしょう。……役立つって思いたい。
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