【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

「わぁ……っ!」

 ドラゴン……ムーンに乗るのはこれで二回目だけど、頬を撫でる風がとても心地良い。

「流れ星が手の中に落ちてきそうです!」
「はは、本当にそうなったら宝物になるのにね」

 楽しそうな声が耳元をくすぐる。その感覚に身じろぐと、逆に身体を固定するように抱きしめられた。

「寒くない?」
「へ、平気です」

 むしろ、背中に伝わる彼の体温に、私の体温が上昇した気がする。

 ムーンはただ、公爵家の上空をくるくるとゆっくり飛んでいる。夜だからなのか、それともただ単に私たちのことを気遣っているのか……どちらだろう。

「こんなに流れ星が見られると、願いが叶いそうですね」
「願いが叶う?」
「ええ。流れ星が流れているあいだに三回願い事を唱えると、叶うという話があるのです」

 ……この世界であるかどうかはわからないけれど。

「へぇ、確かにこんなに流れていると、唱えられそうだ」

 フィリベルトさまは、私の言葉を素直に受け取ってくれて、同意してくれた。

「でも星に願って叶えられるって、すごい発想だね」
「そうですね……それだけ、そのことに本気なのかもしれません」

 普通なら流れ星が光っているあいだに願い事を三回唱えるなんて、無理だと考えるだろう。でも、もしもそれがとても真剣な願い事だったら? (わら)にも(すが)る思いだったら?
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