【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「リディアなら、なにを願う?」
「私なら……いえ、もう叶いましたわ」

 フィリベルトさまが「叶った?」と不思議そうに聞いてきたので、こくりとうなずいた。

「だって、私が望んだことは、『恋愛がしたい』ですもの」

 くすっと笑いながら、自分の望みを口にすると彼は納得したように「なるほど」とつぶやく声が聞こえた。そう――私が望んだのは、恋愛がしたいということ。それはもう叶ったもの。フィリベルトさまのおかげで。

「フィリベルトさまは、願い事がありますか?」
「オレ? ……そうだなぁ……。このまま、リディアがオレのことを受け入れてくれますように?」

 フィリベルトさまに(たず)ねると、そんな答えが返ってきた。その言葉に、小さく口角を上げてしまう。

 この人は私のことを愛してくれているのだと、じわじわと実感がわいてきた。

「そうなりますわ、きっと。私のことを、離さないでくださいね」
「もちろん。きみも、オレのことを離さないでくれよな」
「……ええ、もちろん」

 そっと、フィリベルトさまの手が頬に触れる。くいっと顔を後ろに引き寄せ、ちゅっと軽くキスをする。

 ムーンがぴたりと動きを止めて、ゆっくりと降下した。

 空の散歩は、ここで終わりみたい。
< 101 / 146 >

この作品をシェア

pagetop