【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 ……う、噂を広めておいた? わざと?

「学園でもきっと注目の的よ」

 人に注目されるのは慣れているけれど、好奇の視線に(さら)されることを覚悟しないといけないわね、と内心苦笑を浮かべつつ、エステルさまとローレンスさまを見つめながら口を開く。

「お時間は大丈夫ですか?」
「あ、いけない。遅刻はダメよね」
「行ってくるよ、ふたりとも。リディア嬢、ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます。夜会、楽しんできてくださいませ」

 フィリベルトさまは「いってらっしゃい」とだけ。

 公爵夫妻を見送って、フィリベルトさまは歩き出す。

「こっちが食堂だよ」

 食堂まで案内された。食堂に入るとメイドたちが私たちに気付き、すっと頭を下げた。

「食事の準備を頼む」
「かしこまりました」

 すっと椅子を引かれて、私はそこに座った。その隣に彼が座るとすぐに食事が運ばれてきた。さっき頼んだばかりなのに!? と目を(みは)る。……でも、とってもいい匂いで食欲を刺激される。

「美味しそうですね」
「お口に合えばいいのだけど……」

 他国の本格的な食事って、初めて食べるかもしれないわ。

 スープやサラダ、メインディッシュはステーキ、かな。他にもいろいろ食堂のテーブルに並んでいるけれど、さすがに完食は無理そうだ。
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