【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 スープはコーンポタージュのようだ。スプーンで(すく)って口に運ぶと、とうもろこしの甘さが口の中に広がる。

 温かいスープが食道を通り、胃の中に落ちると、とたんに身体がぽかぽかとしてきた。

 空の散歩で思ったよりも身体が冷えていたみたい。

 サラダもレタスの瑞々(みずみず)しさや、トマトの爽やかさ、ルッコラのほんのりとした苦味とゴマのような風味。それを引き立てているドレッシング。

 ステーキは塩コショウのシンプルなもの。でも、お肉自身が良いものなのだろう。とっても美味しい。

 ふわふわの白いパンもまた美味しかった。……というか美味しいものしか食べていないわね、私。考えてみたら。

 公爵家の令嬢として生まれたから、衣食住とても恵まれていたのよね、私。

「とても美味しいですわ」
「それは良かった」

 心底安心したように息を吐くフィリベルトさまに、首をかしげる。すると、彼はこんなことを離してくれた。

「とあるパーティーで耳にしたんだが、食が合わないと相当つらいらしい」

 曰く、その人は婿として他国で暮らすようになったのだが、食が合わずに相当苦労して、なんと自分で料理するようになったのだとか。
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