【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「……ところで、こちらはカントリーハウスなのですか?」
「ああ、そういえば伝えていなかったね。そうだよ」
と、いうことは本当にここでフィリベルトさまが生まれ育ったのね。
「ようこそ、スターリング領へ」
「歓迎、感謝いたします。……フィリベルトさま、どんなことを手紙に書いていたのか、教えていただけますか?」
「……それはちょっと……」
ふいっと視線を外す彼に、いったいどんなことを書いていたのか、とても気になってきた。
「内緒」
と、悪戯っぽく微笑む姿を見て、なんだかおかしくなって笑ってしまう。
心が、とても穏やかで……このまま時間が止まってしまえばいいのに、と思えるくらいに幸福感で満ちていた。
アレクシス殿下の婚約者として気を張っていた日々を思い返して、肩をすくめてしまう。
私が私でいられる場所を、彼は与えてくれた。
「あ、そうだ。せっかくだから、明日、護衛たちもふたりつけよう」
「せっかくだから?」
キョトンとした表情を浮かべてしまった。彼は私の耳元に近付いて、「きみの侍女たちとお近付きになりたいって人がいるんだよ」とささやいた。
……ローレンとチェルシーを……?
いったいどんな人が彼女たちを見初めたのかしら、と興味がわいてきた。