【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
一瞬、しんと静まり返ってしまったけれど、すぐにパチパチパチ、と拍手の音が耳に届く。
周りを見るとみんな優しく微笑んでいて、私のことを歓迎してくれていると感じた。盛大な拍手を受けて、もう一度カーテシーをするとさらに拍手の音が大きくなる。
……ところで、どうして私、こんなに歓迎されているの……?
そんな疑問を抱きながら顔を上げると、フィリベルトさまに声をかけてきた女性がツカツカと彼に近付いて、バシバシと背中を叩いた。
「これはもう、大切にするしかないですね。フィリベルトさま、リディアさま、お幸せに!」
まだ婚約の段階なのだけど、結婚したような勢いね……? でも、幸せを願ってくれるのは素直に嬉しく感じる。
……ああ、そうか。ここの領民たちは、『私自身』を見てくれるのね。
アレクシス殿下の婚約者としか見られていなかった日々とは、大違いだわ。
「もちろん、大切にするよ」
「私も」
するりと言葉がこぼれ落ちた。そのことに私が一番、驚いたのかもしれない。
――だって、本心なのだもの。
フィリベルトさまを大切にしたい、愛したいと思う気持ちは、私だけのものだから。