【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「フィリベルトさまの初恋の話は、スターリング領ならず国中に伝わっていますからね」

 果物をくれた人が、不思議そうな表情を浮かべているローレンとチェルシーに声をかけた。

 彼女たちには幼い頃のことを話していなかったから、目を丸くしてこちらに視線を向けた。というか、フィリベルトさまが私のことを探していたって、国中に伝わっているの!? とそちらにびっくりよ。

「そんなに有名なのですか?」
「ええ、国中知らない人はいないほどに。きっとフィリベルトさまの『運命』なのだろうと話していたんですよ」
「『運命』……?」

 キョトンとした表情を浮かべる彼女たちに、領民たちがこぞって『運命』の話をする。その内容にふたりの目が大きく見開かれ、ローレンがぽつりと「ロマンチックですね」とつぶやいた。

「ユミルトゥスの人たちは『運命』を信じていますからね」
「素敵なことだと思います!」

 チェルシーは目をキラキラと輝かせていた。ローレンもうなずいていたし、やっぱり『運命』という言葉に惹かれてしまうのはわかる。

「私たちにもいるかなぁ」
「どうなのかしら……?」

 彼女たちがひそひそと話している内容が聞こえて、小さく口角を上げる。ジェレミーとデリックが彼女たちの『運命』なら、私たち三人ある意味運命共同体ね。
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