【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「こんなに歓迎していただけたこと、とても嬉しく思います。貴女(あなた)が声をかけてくれたから、知ることができました。ありがとうございます」
「リディアさま……!」

 彼女は感激したようにうるっと瞳を潤ませた。そんなに感激されることを言ったつもりはないのだけど……と困惑して眉を下げてしまう。

「この国で暮らすことを、楽しみにしていましたのよ。領民の方々と会うことも、この領地がどんなところなのかを見ることも、ワクワクとしていましたの」

 それについてはローレンとチェルシーも同じだと思う。彼女たちが私についていくと決めて、嬉々として荷物をまとめていたとき、ふたりでユミルトゥスのことをたくさん話していたことを知っている。

 私も一緒にいたから。彼女たちは私のためにユミルトゥスのことを調べて、教えてくれていたの。

 そのときに、いろいろなことを教えてくれた。

 ユミルトゥスの学園のことについては、さすがによくわからないままだったけど。

 それは仕方ないことだと思う。とりあえず、貴族の通う学園ということだけは知っているのだけど……エステルさまがいうには『自由』な場所みたいだから。

 通っていた学園とはきっとまったく違うのだろうと思うと、不安と期待と半々くらいの気持ちなのよね。

 ……ううん、期待のほうがちょっと大きいかもしれないわ。

 だって、この国には私のことをちゃんと見てくれる人たちがいるのだと思うと、今までの苦労も報われそうな気がするの。
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