【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「お待たせしました。……って、どうしました?」
「本屋が近くにあると聞きまして……」
「ああ、ローレンさんの趣味が読書ですものね。案内しますよ」

 ジェレミーがそっとローレンに手を差し出す。彼女はぽっと頬を赤らめながらも、その手を取った。さっき『運命』の話を聞いたからかしらね?

「フィリベルトさま、別行動でも構いませんか?」
「ああ。デリックもいいぞ」
「は、はいっ! で、ではチェルシーさん、いきたいところはありますか?」

 フィリベルトさまに許可を得たふたりは、それぞれ行動を始めた。チェルシーがデリックと私を交互に見たので、こくんとうなずく。

「えっと、じゃあ……いろんなところを見て回りたいです!」
「わかりました、ご案内いたします」

 デリックもチェルシーに手を差し出していた。手を取って歩き出すのを見送ってから、フィリベルトさまに「オレらもいこうか」と声をかけられた。

 領民たちに挨拶をしてから、私たちも足を動かす。こちらに向けて手を振ってくれる人がいたので、手を振り返すとわぁああ、と歓声が上がった。……思っていた以上に、歓迎されていて本当にびっくりしたわ……。

 心臓がドキドキしているわ。こんなに歓迎されるなんて、夢にも思わなかったから。
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