【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「驚いただろう?」
どこに向かっているかもわからないけれど、とりあえずフィリベルトさまと一緒に歩いた。彼が少し不安げに問いかけてくるから、顔を上げてこくりと首を縦に振った。
驚いたことは本当だから、隠すことはないと思ったの。
「両親がいろいろ気を回してくれたようだ」
「え?」
「領民たちから歓迎されたら、リディアもこの領地を気に入ってくれるんじゃないかって考えたのかも、特に母上が」
エステルさまが……? という疑問ではなく、エステルさまならあり得ると納得してしまった。
「こんなに歓迎されるなんて、本当に驚きましたわ」
「……それで、どう? ここでやっていけそう?」
きっと、それを一番に聞きたかったのだろう。私はくすっと笑い声を上げて、彼を見つめる。
「ええ、ここの領地の方々はみなさん、優しそうですから」
私の答えに、フィリベルトさまは目元を細めて小さく首を縦に動かす。きっと、彼はこのスターリング領の人たちが好きなのね。領地を守るのが、領主の仕事だ。
彼はずっと、ローレンスさまの背中を見て育ってきたのだろう。
「ところで、私たちはどこに向かっているのでしょうか」
「ん、ちょっとね」
フィリベルトさまはきちんと目的地があったみたい。土地勘のない場所だから、はぐれないようにしっかりしないとね。