【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

 そんなにうっとりと……恍惚(こうこつ)とした表情で言われると、恥ずかしくなってしまうわ。

「あ、ありがとう」
「では、最後にこちらのドレスを」
「これは……黒の、ドレス?」

 クローディアが見せたのは、まるで彼の瞳のような……黒曜石の輝きを持つドレスだった。

 さらりとした肌触りで、着心地は良さそう。そのドレスに着替えて、鏡の前に立つ。

 金色の髪にエメラルドグリーンの瞳。白魚のようなきめ細かい肌に、黒曜石の輝きを持つドレス。

「――美しいですわ」

 本当にそう思っているのだろう。

 感慨深そうにつぶやくクローディアに、顔を向けた。

「このドレス、どうしたの?」
「フィリベルトさまの依頼で作りました! あ、この姿はぜひフィリベルトさまにも見ていただかなければ!」

 彼女はぐっと拳を握って答え、そのままフィリベルトさまのところに駆けていった。彼が、このドレスを依頼したって、どういうことなのかしら?

 こてんと首を傾げていると、クローディアがフィリベルトさまを連れてきた。

「――ッ」

 フィリベルトさまが、息を()む音がした。目を大きく見開いて、私のことを見つめている。

「フィリベルトさま……?」
「あ、ああ……すまない。あまりに美しすぎて、言葉が出なかった」
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