【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 きゃ、とクローディアが自分の頬に手を添えて歓喜の声を上げた。

「あ、ありがとう、ございます……」

 まさかそんなに賞賛されるとは思わなくて、顔に熱がどんどん集まってくる。きっと私、顔が真っ赤になっているわ。

「……では、ごゆっくりどうぞー」

 クローディアがにこにこと笑いながら、私とフィリベルトさまを二人きりにした。パタン、と扉が閉まる音を聞きながら、私とフィリベルトさまは顔を見合わせてしまった。ごゆっくり、ってなによ、ごゆっくりって!

 心の中でそう叫びながら、フィリベルトさまのことを見上げる。

「あ、あの、制服やドレスを依頼していただいて、ありがとうございます」
「い、いや。ユミルトゥスに留学するんだ。オレにできることをしたまでだよ」

 ふるふると首を横に振るフィリベルトさまに、私は微笑みかけた。その心が嬉しいのだと伝えるには、どうすればいいだろう?

 そっと彼の手に触れて、両手で包み込むようにすると、驚いたように目を丸くする姿が見えた。

「――私のために、してくださったのでしょう?」
「リディア」
「とても、嬉しいのです。フィリベルトさまが私を想ってくださっているのが、わかって」

 考えてみれば、アレクシス殿下が私に贈り物をしたことはなかった。婚約者として彼の隣に立っていても見劣りしないように、と公爵家の財力で用意していたのよね、ドレスやアクセサリー。

 だからこうして、私のために用意してくれるということがわかって、気恥ずかしさとともに大声を上げたいほどの喜びでもあるのよ。
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