【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

昔話

 私の言葉にフィリベルトさまは目を丸くして、ふっと表情を和らげた。彼はそっと手を伸ばして私の髪に触れ、そのまま唇を落とした。

「ふぃ、フィリベルトさま?」
「伝え続けていてよかった」

 え? と聞き返してしまった。でも、すぐに彼の言っていたことが理解できて、ふふっと笑い声をこぼす。

「ええ、貴方(あなた)の愛情が、私を素直にさせてくれたのです」

 自分の胸に手を置いて、目を伏せる。

 期間限定の恋人だったときから、彼は真摯(しんし)に向き合ってくれた。そのことがとても嬉しく、ありがたかった。

 婚約破棄をされた私にプロポーズされたときは、びっくりしちゃったけど……こんな私でも望んでくれる人がいると知って、ほっと安堵もした。

 公爵家の令嬢とはいえ、婚約を破棄された令嬢はいろいろな目で見られるし……特に『リディア』はフローラをいじめていたという捏造もされていたしね。

 だから、一日休んでから学園に登校するとき、フィリベルトさまが一緒で心強かった。

「ところで、フィリベルトさまと幼い頃に会っている……のですよね? 私、そのときの記憶が思い出せなくて……」

 眉を下げて頬に手を添える私に、フィリベルトさまは「ああ……」と懐かしむように目を細めた。

「懐かしいな」
「竜を怖がっていたのですよね、私」

 肯定するように首を縦に動かすフィリベルトさま。
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