【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 前世の記憶を取り戻した私は、竜のことは怖くない……いや、怖くないといえば嘘になるかもしれないけれど、想像上の生き物だった竜をこの目に映して興奮してしまった。

 ムーンも、他の竜たちも想像以上の生き物だった。人懐っこい竜にしか会っていないから、怖さよりも好奇心のほうが勝ってしまった……と思うのよね。

「まぁ、実際子どもの頃見たら、怖いと思うよ。オレも最初に会ったときは怖かったし」

 肩をすくめるフィリベルトさまを見て、意外に感じて目を(またた)かせてしまった。

 フィリベルトさまでも怖いと思うことがあったの? と。

 私の考えを読んだように、彼は私の髪から手を離して、寄りかかるようにこつんと側頭部と側頭部がくっついた。

「ムーンはずっとあの大きさだったからな。父上に紹介されたとき、母上の後ろから離れなかったと何度もからかわれた」
「まぁ、フィリベルトさまに、そんな時代(とき)が……」
「幻滅したかい?」
「いいえ。可愛らしい話だと思います」

 そう思ったのは、本当。

 私の知っているフィリベルトさまは、いつも格好良くてスマートな方だから……こういうエピソードを、もっと知りたい、なんて……ワガママかしら?
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