【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「――……?」
ふと、なにかが脳裏をよぎった。
『だいじょうぶ、この竜はだいじょうぶだよ』
そして、誰かの声が響く。……これはいったい? 目を閉じてフィリベルトさまに寄りかかると、「リディア?」と柔らかく名前を呼ばれる。
なにかが崩れるような音がして、――鮮明に、過去の記憶がよみがえった。
そう、そうよ。幼い頃、私とフィリベルトさま、ムーンは出逢ったことがある。国境近くまで遊びにきていた私は、初めて見る竜に怯えて、泣いてしまって――ムーンに乗っていたフィリベルトさまが声をかけてくれたんだわ……。
――どうして、こんな強烈な記憶を忘れてしまっていたのだろう。
『わぁ、きみ、すごくきれいな人だね』
『あ、りがとう……?』
『こんなにきれいな女の子、はじめて見た!』
黒曜石のような瞳をキラキラと輝かせて、私を見た男の子――それが、フィリベルトさまだった。
男の子に『きれいな女の子』と褒められたのは初めてだったから、とても嬉しかったのよね。
ムーンがにゅっと顔を近付けてきたので、怖くて後退りして転びそうになったところを、彼が支えてくれた。
これが私たちの……最初の出逢い?
「フィリベルトさま……私、幼い頃、貴方に支えてもらったことが、ありますよね?」
「あ、ああ。転びそうになったきみを支えたことがある……リディア、記憶が?」
ふと、なにかが脳裏をよぎった。
『だいじょうぶ、この竜はだいじょうぶだよ』
そして、誰かの声が響く。……これはいったい? 目を閉じてフィリベルトさまに寄りかかると、「リディア?」と柔らかく名前を呼ばれる。
なにかが崩れるような音がして、――鮮明に、過去の記憶がよみがえった。
そう、そうよ。幼い頃、私とフィリベルトさま、ムーンは出逢ったことがある。国境近くまで遊びにきていた私は、初めて見る竜に怯えて、泣いてしまって――ムーンに乗っていたフィリベルトさまが声をかけてくれたんだわ……。
――どうして、こんな強烈な記憶を忘れてしまっていたのだろう。
『わぁ、きみ、すごくきれいな人だね』
『あ、りがとう……?』
『こんなにきれいな女の子、はじめて見た!』
黒曜石のような瞳をキラキラと輝かせて、私を見た男の子――それが、フィリベルトさまだった。
男の子に『きれいな女の子』と褒められたのは初めてだったから、とても嬉しかったのよね。
ムーンがにゅっと顔を近付けてきたので、怖くて後退りして転びそうになったところを、彼が支えてくれた。
これが私たちの……最初の出逢い?
「フィリベルトさま……私、幼い頃、貴方に支えてもらったことが、ありますよね?」
「あ、ああ。転びそうになったきみを支えたことがある……リディア、記憶が?」