【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 目を開けて、鏡越しにフィリベルトさまを見つめて問いかけると、彼は肯定のうなずきをしてから目を大きく見開いた。

「……そう、みたいです。ふふ、初対面の男の子に、『きれいな人』って褒められて嬉しかったのに、どうして忘れていたんだろう……」

 懐かしむように目元を細めて、口元に手を添えてくすくすと笑う。

 鏡越しに見るフィリベルトさまの顔は真っ赤に染まっていて、なぜか愛らしく思えた。

 格好良いところも、可愛らしいところも愛らしく思えるということは……それだけ私が、彼のことを好きになった……ということよね。

「いや、その、本当にそう思ったんだ。きみの周りがキラキラしていているようにも見えて、きれいだなって。――それからだよ、きみが誰なのか探し始めたのは」

 真っ赤に染まった顔を隠すように手で覆うフィリベルトさま。ぽつぽつと出逢ったあとのことを話し始めた。

「両親に話して、絶対に見つけ出すから婚約者の話はしないでほしいとお願いして、国中を探したのだけど……この国にはいなくて。なんせ金髪とエメラルドグリーンの瞳という特徴だけで探していたからね」

 それは……探し出すのは困難だったろう。

 フィリベルトさまが人を探していることを、スターリング領の人たちは知っていたし、国中に伝わっているという話もこの耳で確かに聞いた。

「その後、公務で国境を渡った父上が、金髪でエメラルドグリーンの瞳の少女がいたという話をして、留学を決めたんだ」
「……私を、探すために……?」

 こくり、と首を縦に動かすのを見て、私は目を丸くする。

 ……すごい行動力だわ、と感嘆(かんたん)の息を吐いた。
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