【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

貴方と出逢えて

「きみに助けられたとき、やっと見つけたという気持ちが強かった。声をかけたかったけれど、なかなか勇気が出なくてね……」

 情けないだろう? と頬をかくフィリベルトさまに、私は首を左右に振る。

 あの頃の私は、アレクシス殿下の婚約者として気を張って過ごしていたから、声をかけにくい雰囲気だったのもわかる。むしろ、人と接するのはお茶会やパーティーのとき限定だった。

 もちろん、学園の人たちとも話していた。……必要最低限の話だけど、ね。

「きっと、あの婚約破棄宣言がなければ、こうしてフィリベルトさまと穏やかに話せるようにはならなかったと思いますわ」

 フィリベルトさまと(おだ)やかに過ごす時間が、心の傷を癒してくれた。

 婚約破棄されてからのプロポーズだったから、傷ついた心と驚きが混じり合っていろいろ複雑だったのは本当だけど……彼の言葉のおかげで救われたと思うこともあるの。

「そういえば、期間限定の恋人……の、期間を設定していませんでしたわね」

 婚約破棄されたあとのことを思い返していると、期間限定の恋人になったときのことも思い出した。あのとき、フィリベルトさまは『期間限定の恋人』を提案してくれたけれど、その『期間限定』の期間を決めていなかったことに気付いたのだ。

「……あ、気付いちゃった?」
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