【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

行きたい場所

 唇が離れて、それと同時にゴーン、ゴーンという音が耳に届いた。

 びくっと肩を震わせると「もう昼か」とフィリベルトさまがつぶやく。も、もうお昼?

 ぐぅ、とお腹の虫が鳴いて、慌てて自分のお腹を両手で押さえた。

「ああ、やっぱりお腹空いたよね。ホタテ一個しか食べてなかったし……ここら辺で、ランチにしようか」
「そ、そうですね……」

 やっぱり聞こえていたみたい。お腹空いているからお腹の虫が鳴くのは仕方ないことなのだけど……恥ずかしいものは恥ずかしいわ。

「クローディアを呼んでくるよ」
「お、お願いします」

 名残惜しそうに私の唇を親指でなぞってから、離れていくフィリベルトさまを見送る。

 鏡に視線を向けると、顔を真っ赤に染めた自分と目が合った。

 いつか、真っ赤にならなくなるのかしら。……なんて、遠い未来のことを想像して、さらに顔を赤らめてしまう。

「リディアさま、失礼します」

 クローディアがこちらにきて、顔を真っ赤に染めた私に気付いてにんまりと笑みを浮かべた。
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