【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「留学生のリディア・フローレンスと申します」

 スカートの裾を持ってカーテシーをしてから、胸を張って学生たちを見渡す。

 フィリベルトさまと視線が交わると、彼は小さくうなずいた。

 そっと左手を胸元に置くと、きらりとダイヤモンドの指輪がきらめいた。指輪に気付いた人たちが「キャァ」と短めな黄色い悲鳴が耳に届く。

「そして、そちらにいらっしゃるフィリベルト・スターリングさまの婚約者です。どうぞ、よろしくお願いいたします」

 堂々と、胸を張って彼の婚約者を名乗れる。そのことが、とても嬉しいの。

 反応は様々だったけれど、パチパチと拍手の音が聞こえ始めた。どんどんと大きくなって、割れんばかりの拍手の音に一瞬呆気に取られてしまったけれど――初めて会った学生たちにこんなふうに祝福の拍手を受けるとは、となんだか心がくすぐったい。

 ――これが、私の恋物語。

 これから先もずっと続く、私だけの物語。

 再びフィリベルトさまと視線が合って、ふわりと微笑んだ。

 留学生として学園に登校した初日、胸に希望と期待を膨らませてこの教室に立った。

 ――さぁ、私だけの物語を、もっともっと楽しんでいきましょう。

 フィリベルトさまと一緒に、作り上げていくの。

 私たちの、恋物語を。



―Fin―
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