【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

「オレがいないあいだ、スターリング領を頼むよ」

 ジェレミーが最初に出した本のおかげで、スターリング領はすっかり観光地になっている。特に夕方の時計塔は鐘の音が違うので、そこで告白やプロポーズをすると幸せになれるというジンクスが生まれ、人々が集まる場所になっていた。

「本当に護衛を連れていかないのですか?」

 少しだけ不安そうに首をかしげるジェレミーに、ぽんと肩を叩く。安心させるように。

「そのつもりだ。平和な国のようだしな」

 父から聞いた話では、たくさんの花が咲き誇る国、らしい。

 ――彼女は、そこにいるのだろうか。

「……見つかるといいですね」
「フィリベルトさまの想い人が見つかることを、我々は祈っています」
「……ありがとう」

 ジェレミーとデリックには、よく護衛としてついてきてくれたので、オレの彼女への想いをよく知っている。

「もしも見つかったら、そのことも物語にしたいですねぇ」
「それは、再会してから聞いてみないといけないな」

 ニヤリと口角を上げると、ジェレミーとデリックも同じような顔をした。

 ……そして、月日は流れて留学した。学園の入学式で、金色に輝く髪ときらめくエメラルドグリーンの瞳を持つ、彼女を見つけた。どうやら彼女はオレのことを覚えてはいないらしい。

 だが――留学生として注目を浴びて、女学生たちに囲まれていたところを助けてくれた。

 幼い頃とは違い、凛とした声と姿に目を奪われた――が、彼女にはすでに婚約者がいるらしい。
< 145 / 146 >

この作品をシェア

pagetop