【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 人が滅多に通らない森の奥深くに竜が隠れていて、ずーっと洞窟の奥で暮らしていたけれど、ある光――きっと少女のことよね――が見えて、ようやく外へ歩きだす。

 そんな少女と竜が出会ったところで物語が終わってしまった! どうして少女は竜を騎士にしたいのかしら?

「お昼の時間になりましたが、昼食はどちらで食べますか?」
「もうそんな時間? うーん、お腹空いていないから、まだ良いわ。ローレンは食べてきて?」

 なんせ紅茶とクッキーで結構お腹がたぽたぽしているのよね。

 午前中のすべて、読者に費やしたわ……こんなに夢中になって本を読んだの、この世界では初めてかもしれない。

「そんな……具合が悪いのですか?」
「違う違う、本を読みながらお茶とクッキーを食べたからね」

 眉を下げてこちらを見る彼女に、ひらひらと手を振って元気をアピールすると、ちらりとティーポットと空になったクッキーが乗っていた皿を見て、納得したようにうなずいた。

 なんせあれだけたっぷりあった紅茶が空になっているからね。

 ローレンの淹れる紅茶は美味しいから、ついつい口に運んじゃう。

「それでは、部屋に戻りますか?」
「そうねぇ……もう一冊、本を読もうかしら。お勧めはある? あ、できればあまーいロマンスが良いわ」

 私がリクエストすると、「それでしたら」とローレンは書庫を見渡して、スタスタと迷うことなく本棚に向かい、本を取り出すと戻ってきた。
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