【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 扇子を広げて口元を隠した。そして、口を開く。

「そうですか」

 ――ごめん、リディア。貴女(あなた)のように振舞えない……。一気に前世を思い出してしまったからか混乱が凄まじい。

 アレクシス殿下は私の一言に、一瞬呆気に取られたような顔をして、それから怪訝(けげん)そうに眉間に皺を刻んだ。

「ずいぶんと大人しいのだな。貴女がフローラにした嫌がらせもここで暴こう」

「嫌がらせ?」

 首を傾げて問うと、殿下はカッと怒りで表情を険しいものに変える。

 ……仮にも一国の王位継承者が、そんなにすぐ表情に出るのはどうなのかと思う。

 だからこそ、私のような――いや、リディアのような女性が婚約者にされたんだろうけど。

 婚約破棄されたなら、それで別に構わないんだけどなぁ。

 確か、リディアは公爵の娘だから、殿下と結婚すると血が濃くなっちゃうのよね。

「白を切るな! 貴様がフローラを階段から突き落としたり、嫌がらせをしたり、彼女を傷つけていたことを知っているのだぞ!」
「え、そうなんですか?」

 ざわざわとギャラリーが騒ぎ始める。まぁ、いきなりの婚約破棄宣言だったしね。ところで、私、そんなことしていたっけ?

 えーと、リディアがフローラにした嫌がらせの内容ってどんなのだったかしら? 中途半端にプレイしていたから、覚えているところと覚えていないところがあるわ……。ちらりと周りに視線を巡らせる。
< 2 / 146 >

この作品をシェア

pagetop