【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 応接室に入ると、お父さまは私を見て一瞬目を見開いたけれど、すぐにごほんと咳払いをした。

 お父さまの隣に座ろうとしたけれど、フィリベルトさまが椅子を引いて彼の近くに座るようにうながし、ちらりとお父さまの顔を見ると、小さくうなずいたので彼に顔を向ける。

「ありがとうございます」

 椅子に座りお礼を伝えると、彼は緩やかに首を横に振り私の近くに座った。

 チェルシーにお茶を淹れてもらい、彼女が一礼して部屋から出ていくのを見送ってからフィリベルトさまが口を開く。

「急の訪問、申し訳ありません」

「いや……正直驚いてはいるが、昨日リディアから話は聞いていたので……」

 お父さまもまさか昨日の今日でくるとは思わなかったでしょうからね……驚きすぎて口調が怪しいわ。

 紅茶に手を伸ばして、とりあえず落ち着こうと一口飲む。

「なら、話は早いですね。昨日、私はリディア嬢に求婚しました」

 ――紅茶、飲み込んでいて良かった……!

 危うく咳き込むところだったわ!

「……リディアを選んだ理由を、お聞きしても?」

 あ、お父さま、混乱から少し回復したみたい。

 なにかを探るようにじっとフィリベルトさまを見つめるお父さま。

 確かにいきなりの求婚だったし……なにか理由があるのかしら?

 私も理由が気になり、フィリベルトさまをじっと見つめる。すると、彼は一度紅茶を飲んでから、にこやかに話し始めた。
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