【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「おそらく、リディア嬢は覚えていないと思いますが……」

 そんな前置きをしてから、私の瞳を見つめる。その真摯(しんし)な表情にドキッとした。イケメンだなぁ。

 顔だけ見ればアレクシス殿下もイケメンなんだけど(なんせ乙女ゲームの攻略キャラなわけだし?)中身がなぜああなったのか。それを知りたいところだわ。

「入学式に、私は貴女(あなた)に助けられたのです」
「入学式に、ですか……?」

 はて、誰かを助けた記憶はないんだけど……?

 こてんと小首をかしげると、フィリベルトさまは少しだけ眉を下げた。その顔に、入学式の記憶がぱっとよみがえった。

 ああ、そういえば……女性に囲まれていた人がいたような……。あんまりにも困った顔をしていたから、声をかけたんだわ。

淑女(レディ)たるもの、相手の迷惑も考えずに騒ぎ立てるものではありません』

 ――ふと、入学式にリディアが口にしたセリフが頭の中で再生された。

 あれを言ったのは私であって私じゃないんだけど……あー、ややこしい!

「思い出していただけましたか?」
「……ええ。ですが、それだけで?」
「私はあの日、留学生として目立っていたようで……入学式が終わっても女性たちに囲まれ、なかなかクラスにいけずに困っていたところを、貴女が助けてくれました。ずっとお礼を伝えたかったのですが……」

 私に声をかけられなかった、ということね。まぁ、それは仕方ないと思うわ。

 入学式からずっと、私に取り入ろうとする人たちや、アレクシス殿下の婚約者だからって睨まれてもいたし。

 私とアレクシス殿下の婚約は、陛下とお父さまが決めたことだから、敵視されても困るのだけど。

 正直、あの学園で心から私の味方といってくれる人はいないに等しいでしょう。
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