【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「きみは、娘の味方になってくれるのかい?」

 お父さまに尋ねられ、フィリベルトさまは「もちろんです」と力強くうなずいた。

 その瞳は、とても優しく見えた。

「ふむ。……実は本日、陛下に呼ばれていてね。悪いがリディア、フィリベルトさんのことを頼むよ」
「……もしかして、昨日の婚約破棄の件ですか?」
「いろいろだよ、リディア。では、あとはふたりで話していてほしい。リディアの選ぶ道を、私は応援するからね」

 お父さまはとても優しい笑顔を私に見せて、椅子から立ち上がり応接室を出ていった。そして、残された私たちはしばらく黙っていたけれど……ちらりと彼に視線を移すと、ぱちっと視線が交わる。

「……フィリベルトさまは、おひとりでこちらまで?」
「屋敷の外に護衛を待たせています。ところで、リディア嬢、良ければ少し歩きませんか?」

 彼の提案にうなずいた。ずっと応接室で黙っているわけにもいかないし……確か、花壇の花々がきれいに咲いていたはずだから、中庭まで歩こうかな。

「ええ、いろいろお話もしたいですし」

 頬に手を添えてにっこりと笑ってみせると、彼も微笑んだ。

 お茶を飲み干してから、応接室を出て廊下で一度立ち止まる。

「中庭の花がきれいに咲いていますの。なので、良かったら中庭までいきませんか?」
「それは見てみたいですね」

 それでは案内いたしましょう、と歩き出す。

 中庭まで沈黙は続いた。ただ、一緒に歩くだけ。

 中庭につくと、くるりと身体を反転させ、改めてフィリベルトさまを見上げる。

「フィリベルトさま。――私、今からとても、貴族とは思えないことを言いますね」
「リディア嬢?」
「――私、恋愛がしたいのです」
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