【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
アレクシス殿下とフローラがどういう顔を見せてくれるのか、それも今から楽しみだわ。
「お嬢さま、いらっしゃったようですよ」
「ええ」
学園はこの屋敷から馬車で三十分くらいの場所。
だから、このくらいの時間にくると思った。
玄関をノックする音が聞こえて、ローレンが扉を開ける。
制服姿のフィリベルトさまが、私を見て少し驚いたように目を見開き、それから胸元に手を添えて頭を下げた。
「おはようございます。今日もお美しいですね、リディア嬢」
「おはようございます。貴方も格好良いですわ、フィリベルトさま」
にこやかに挨拶を交わして、屋敷から馬車に乗り込む。
そして、昨日の言葉通り彼は本当に学園までエスコートをしてくれた。
学園の前で馬車を止めて、先に馬車を降りてから私へ手を差し伸べる。その手を取って馬車を降りると、彼を見上げて微笑む。
周りには学生たちがいて、私たちのことをじっと見ていたことに気付いた。ざわざわと騒ぎだす学生たちの視線が痛いけれど、気にしない。
婚約破棄宣言にショックを受けて学園を休んだと思われているでしょうから、こうしてフィリベルトさまと一緒に登校するなんて、誰も考えていなかったでしょうね。
「婚約を破棄する宣言をされて、すぐに他の男性にエスコートをされるなんて、リディアさまはなにをお考えなのかしら?」
おっといきなり攻撃を受けたわ。しかも、その声の主はフローラだ。
隣にはアレクシス殿下がいた。なんというブーメラン。……主人公ってこんな性格だったかなぁ?
「ごきげんよう、アレクシス殿下とフローラさま。それでは、失礼します。いきましょう、フィリベルトさま」