【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「……フローラさんが語ったことを、そのままお伝えするのはちょっと……」

 先生がためらうくらいのことを、話したってことよね。いったいどんなことを言ったのか、逆に気になるわ。

「いいえ、おっしゃってください。知らなければ、戦いようがありませんわ」

 ぎょっとしたように目を見開く先生。

 そして、一度大きくため息を吐いてからフローラの言ったことを簡単に教えてくれた。

 ――曰く、水をかけられた、教科書を破られた、足を踏まれた、頬を叩かれた、数人で囲い込んで罵倒を浴びせた――などなど。

 それを泣きながら口にしたらしい。女優になれるんじゃないか、彼女。

 呆れた表情を浮かべてしまい、こほんと咳払いをして肩をすくめた。

「事実無根ですわ」
「……でしょうね」

 この先生は、私のことをよく知っている。ひとりで行動するところを見て、わざわざ声をかけてくれた優しい人なの。

「――それで、どうするおつもりですか?」

 フィリベルトさまは、にやりと口角を上げてこちらを見る。私はふっと表情を緩めて彼を見つめた。

「もちろん――……」

 目には目を、歯には歯をってね!

 とはいえ、私はもうアレクシス殿下の婚約者のままでいたくない。

 それなら、そうね。

 私がフローラにしたというイジメの内容を、ちょっと利用させてもらいましょう。
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