【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
あら、口調が変わったわ。きっと、この口調が彼の素なんでしょうね。
学園から家まで送ってもらった。彼は寮で暮らしているだろうから、戻ることになるのよね。
「では、明日」
「ええ、送ってくださってありがとうございました」
彼はちゅっと軽い音を立てて私の手の甲に唇を落として、去っていった。そっと唇が落とされた手の甲に触れる。
フローラたちのことで頭がいっぱいになっていて、仮の恋人になったという事実が頭から抜けていたわ。なんだか、申し訳なく思ってしまう。
「おかえりなさいませ、リディアお嬢さま」
「ただいま、ローレン。明日、やりたいことができたの。突然だけど、手伝ってくれる?」
「いったい、なにをなさるおつもりですか?」
「んー……教育?」
人差し指を頬に添えて、こてんと首をかしげると、ローレンはぱちぱちと目を瞬かせた。それから苦笑を浮かべてなにも言わなかった。長年私に仕えているから、なにをするのか察してくれたみたい。
「マダムには連絡しましたか?」
「急だけれど、来てくださるかしら」
「ええ、きっと。新しい王妃候補を一目見ないと、気が済まないでしょうし」
――そう、マダム・カステル。
王妃教育を熱心にしてくださった方。
お父さまのいとこだから、それはもう……すごく、厳しかった。
頭の天辺からつま先の角度まで、アレクシス殿下の婚約者であることを理由に、それはもう散々とダメ出しを受けてきたのだ。
ちょっとしたトラウマにもなるというものよ……。
明日、フローラにどんな反応をするのかしら。
彼女と同じことはしないけれど、私が受けていた教育をぜひフローラに味わってほしいと思っているの。
彼女も男爵令嬢だし、礼儀作法くらいはできるでしょ、たぶん。
「それにしてもちょうど良いタイミングでしたね。マダム、いらっしゃっていますよ」
「えっ」
それを早くいってよ、ローレン! 心の準備が必要なのよ、マダムと会うときは!
学園から家まで送ってもらった。彼は寮で暮らしているだろうから、戻ることになるのよね。
「では、明日」
「ええ、送ってくださってありがとうございました」
彼はちゅっと軽い音を立てて私の手の甲に唇を落として、去っていった。そっと唇が落とされた手の甲に触れる。
フローラたちのことで頭がいっぱいになっていて、仮の恋人になったという事実が頭から抜けていたわ。なんだか、申し訳なく思ってしまう。
「おかえりなさいませ、リディアお嬢さま」
「ただいま、ローレン。明日、やりたいことができたの。突然だけど、手伝ってくれる?」
「いったい、なにをなさるおつもりですか?」
「んー……教育?」
人差し指を頬に添えて、こてんと首をかしげると、ローレンはぱちぱちと目を瞬かせた。それから苦笑を浮かべてなにも言わなかった。長年私に仕えているから、なにをするのか察してくれたみたい。
「マダムには連絡しましたか?」
「急だけれど、来てくださるかしら」
「ええ、きっと。新しい王妃候補を一目見ないと、気が済まないでしょうし」
――そう、マダム・カステル。
王妃教育を熱心にしてくださった方。
お父さまのいとこだから、それはもう……すごく、厳しかった。
頭の天辺からつま先の角度まで、アレクシス殿下の婚約者であることを理由に、それはもう散々とダメ出しを受けてきたのだ。
ちょっとしたトラウマにもなるというものよ……。
明日、フローラにどんな反応をするのかしら。
彼女と同じことはしないけれど、私が受けていた教育をぜひフローラに味わってほしいと思っているの。
彼女も男爵令嬢だし、礼儀作法くらいはできるでしょ、たぶん。
「それにしてもちょうど良いタイミングでしたね。マダム、いらっしゃっていますよ」
「えっ」
それを早くいってよ、ローレン! 心の準備が必要なのよ、マダムと会うときは!