【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「アレクシス殿下もいらっしゃるのですよね?」
「ええ、おそらくは」

 フローラがくれば、殿下もくるでしょう、きっと。

 どのくらいフローラの『ご友人』が参加するかはわからないけれど。

 マダムは扇子を広げて口元を隠し、目元を細めた。ぎらぎらと炎が見えるのは気のせいではない、わよね……?

「ところで、リディアさまはこれからどうなさるのです?」
「……実は、竜の国、ユミルトゥスの方に求婚されていまして……」
「まぁ。竜の国といえば、『竜の涙』が有名なところですわね」

 竜の涙――それは、万能薬と呼ばれている。

 守り神である竜が、疫病で苦しんでいる国民たちを(あわ)れんで流した涙。

 それが薬になり、国民は救われたというおとぎ話。

 本当に存在しているのかは、わからないけれど。

「その国の公爵家の方に、求婚されましたの」
「あら、それは素晴らしいですわ。あちらの国の方は愛情深く、結婚すると絶対に離婚しないらしいですわよ」

 ……それ、愛情深いというか、執着心が強いのでは……?

 ともあれ、明日のことをきちんとマダムに伝えられてよかったわ。

 そのあと、少しのあいだ世間話をしてからマダムは帰っていった。

 彼女を見送って部屋に戻ってから、私はようやく緊張から解放された。
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