【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「ひ、久しいな。マダム・カステル……いや、少々寝不足なだけだ」
「そうでしたか。それで、どちらの方が次期王妃候補で?」
ちらりと殿下の隣にいるフローラたちを見て、マダムは声をかける。
フローラは緊張した様子で、「わ、私ですっ」と立ち上がった。
立ち上がるとき、ガタンと大きな音を立ててしまい、マダムが眉根を寄せる。
「そう、貴女が……躾ける必要がありそうですわね」
「え? あの……?」
キッと鋭い視線をフローラに向けて、ツカツカと近付き、扇子を取り出して彼女のダメ出しを始めた。
「なんですか、そのぼさぼさな髪は。肌の手入れもしていないようですね。論外です。そして先程の立ち上がり方は上品さの欠片も感じられません。立ち上がった姿もですが。猫背になるのはおやめなさい。王妃というのはいついかなるときも、胸を張り真っ直ぐに前を見据えるものです。――さて、それでは八百五十七年、この国で内乱が起きました。その内乱はなんと名付けられましたか?」
「え? え? ええと……」
「答えられないのですか? 自国のことなのに?」
うわ、久しぶりに聞いたわ、マダムのマシンガントーク。あのフローラがたじたじになっている。と、思ったら目に涙をためてうるうるとマダムを見上げた。
「いきなりそんなことを言われても、混乱しちゃいますぅ」
「……王妃がそれで務まると思うのですか?」
ぴしり、と彼女たちのあいだに亀裂が走ったような気がした。
「そうでしたか。それで、どちらの方が次期王妃候補で?」
ちらりと殿下の隣にいるフローラたちを見て、マダムは声をかける。
フローラは緊張した様子で、「わ、私ですっ」と立ち上がった。
立ち上がるとき、ガタンと大きな音を立ててしまい、マダムが眉根を寄せる。
「そう、貴女が……躾ける必要がありそうですわね」
「え? あの……?」
キッと鋭い視線をフローラに向けて、ツカツカと近付き、扇子を取り出して彼女のダメ出しを始めた。
「なんですか、そのぼさぼさな髪は。肌の手入れもしていないようですね。論外です。そして先程の立ち上がり方は上品さの欠片も感じられません。立ち上がった姿もですが。猫背になるのはおやめなさい。王妃というのはいついかなるときも、胸を張り真っ直ぐに前を見据えるものです。――さて、それでは八百五十七年、この国で内乱が起きました。その内乱はなんと名付けられましたか?」
「え? え? ええと……」
「答えられないのですか? 自国のことなのに?」
うわ、久しぶりに聞いたわ、マダムのマシンガントーク。あのフローラがたじたじになっている。と、思ったら目に涙をためてうるうるとマダムを見上げた。
「いきなりそんなことを言われても、混乱しちゃいますぅ」
「……王妃がそれで務まると思うのですか?」
ぴしり、と彼女たちのあいだに亀裂が走ったような気がした。