【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 言葉が鋭い。

 冷たい口調で問いかけるマダムに、フローラと殿下がびくりと肩を震わせる。

 フローラはわかるけど、なんで殿下までマダムを恐れるのかしら?

 苦手なのは知っているけれど……そして、フローラの『ご友人』たちは全員カチンコチンに固まってしまったわ。

「マダム、フローラさまにはこれからお教えくださいな。教え甲斐があるのでは?」
「……リディアさま、貴女(あなた)がどれだけの努力を重ねていたのか、わたくしはよく知っております。この者に、本当にリディアさまと同じような努力ができるでしょうか?」
「私にはわかりませんわ。ですが、殿下を愛しているのなら大丈夫でしょう。きちんと学んでいただかないと、殿下の隣には立てないのですから」

 頬に手を添えてにこりと微笑みを浮かべ、フローラに向ける。彼女は顔を青ざめてカタカタと震えていた。彼女は、王妃になるということがどういうことなのか、理解していたのかしら?

「リディア、きみはそんなに努力をしていたのか……?」

 呆然とした様子で私を見る殿下に、なにを言っているんだこの人は、と思い切り白い目を向けてしまった。私が――リディアが努力している姿を見てきたはずなのに。

「だってきみはいつも、涼しい顔をしていたじゃないか! どんなことも!」
「ええ。殿下の婚約者に隙があってはいけない、ときつく言われておりましたので」

 姿勢から始まって、ダンスレッスンも血がにじむ思いでこなしてきたのだ。

「……なるほど、だからあんなに隙がなかったのですね」

 フィリベルトさまが納得したようにうなずく。私に近付いて、ぽんと肩に手を置いて柔らかく微笑んだ。
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