【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 とても静かな食事だった。誰ひとり言葉を発せない……そんな雰囲気。

 なんとか食事を追えてデザートとお茶が用意され、陛下がデザートを一口食べてから、ようやく口を開いた。

「リディア」
「はい、陛下」
「うちのバカがすまなかったね」

 ――陛下! それ、ここでいうセリフですか!? ぎょっとして目を見開いてしまった。いやまぁ、ね。陛下がいらした時点で婚約のことだろうなぁとは思ったけど。まさかここで言っちゃうとは……フィリベルトさまもいるのに、身内の話をするのか、と陛下を凝視してしまった。

「では、婚約は解消してくださいますか?」

 謝罪を受け取る前に、これだけは確認しないと。

 陛下は非常に残念そうに眉を下げてうなずいた。よっし、グッバイ王妃教育! ハロー、自由時間! 内心ガッツポーズ。自分の好きなことを探せる。それがすごく嬉しい。

「すみません、発言してもよろしいでしょうか」
「ああ、なんだい、フィリベルトくん」

 すっと右手を上げて発言の許可を求めるフィリベルトさま。なにを言うのだろうとドキドキしながら言葉を待つ。

 すると、彼は私に視線を向けてから、陛下に移した。なんだろう……? 私に対することを口にするのかしら?
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