【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「……リディア。お前がアレクシス殿下の婚約者になったのには、理由がある」
「理由?」
「王族の血を濃くするためだ。血が濃いほど、魔耐性が強くなる。その反面、身体が弱くなったり、精神に少し異常があったり……まぁ、いろいろ支障が……いや、今は置いておこう。そして、これは今まで伝えていなかったことなのだが、どうやらリディアには、近くにいる者を護る力があるようなんだ」

 ……どういうこと?

 私と殿下の婚約は、政略ではなかったの? 私が公爵家の娘で、身分も地位も申し分なかったからではないの?

「アレクシス殿下がリディアと離れてから、一気に殿下の魔耐性が低くなったようでな……」
「私が殿下の傍を離れなければ、こんなことにはならなかった、と?」

 静かに(たず)ねると、返ってきたのは沈黙だ。肯定ってわけね。

「……本当にそうでしょうか。遅かれ早かれ、アレクシス殿下はリディア嬢との婚約を解消していたと思いますよ」
「フィリベルトさま?」
「無礼を承知で申し上げます。アレクシス殿下に人を見る目がなかった。それに尽きます」

 私を庇ってくれているのかな? でも、そんなこと口にしちゃって大丈夫なの!?

 ヒヤヒヤしながらふたりの言葉を待つ。すると――聞こえてきたのは、笑い声だった。

「あっはっは! 確かに! 我が息子ながら見る目がない!」
「くっくっく、アレクシスにリディアを渡すのは、もったいないと思っていたんだ!」

 ――さっきまでの緊張感はどこにいったのでしょうか、おふたりとも。
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