【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 お父さまを見つめながら自分の考えを口にすると、ゆっくりとうなずいてくれた。陛下も「そうか」と少し残念そうに眉を下げていたけれど、私は気にせずに話を進める。

「それに、今の私には、心強い味方もおりますから」

 フィリベルトさまに顔を向けると、彼は一瞬目を大きく見開いてから、嬉しそうに目元を細めてうなずいた。

「――ふむ。では、来期からいけるように調整しよう」
「まぁ、そんなにすぐに?」
「数少ない娘の願いだ。叶えるのが親の(つと)めだろう」

 にこりと微笑まれて、今度は私が目を大きく見開く。お父さまがこんなことを言うなんて! とちょっと感動。

「留学先はユミルトゥスでいいのかい?」
「はい。お願いいたします」

 ユミルトゥスはフィリベルトさまの故郷。竜の国がどんなところなのか、今からワクワクするわ。

「では、私もリディア嬢に合わせて帰国いたしましょう。……これは、婚約の了承を得たと思ってもよろしいのでしょうか?」
「それはリディア次第だな。がんばってみるといい」

 フィリベルトさまをからかうように、お父さまが笑う。ああ、なんだか不思議な感じ。

 私、このままフィリベルトさまと婚約するのかな? いや、それについてはもう少し考えてからにしましょう。

「公爵から『がんばってみるといい』とのお言葉をいただけるとは……ありがとうございます、これで私もリディア嬢を本気で口説けます」

 ――うん? 今までのは本気じゃなかったの? あれで?

 いったいフィリベルトさまはどんな口説き方をするのだろうと、ちょっと興味があるような、知らないほうがいいような。

 ――そして本当に、来期のタイミングに合わせて、私はフィリベルトさまとともに竜の国、ユミルトゥスに向かうことになった。
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