【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 ◆◆◆

「さて、準備は終わったし……ローレン、チェルシー、本当についてきてくれるの?」
「もちろんでございます。それに……」
「それに?」
「竜の国にいれば、あの物語も発売日に買えるかもしれませんし」

 ローレンの本当の目的って、こっちなのでは……?

 チェルシーと視線を合わせて、くすくすと笑い合えば、ローレンがこほんと咳払いをした。

「ふふ、貴女(あなた)たちがいてくれるのなら、心強いわ」
「光栄です、リディアお嬢さま!」

 チェルシーがパァっと表情を明るくさせた。こういうところが可愛いと思う。

 ローレンが妹のように可愛がるのもわかるわ。もしも私に妹がいたら、こんな感じなんだろうなぁと考えていると、扉がノックされた。

「リディア、いるかい?」

 ――この声は!

「キースお兄さま!」

 隣国に留学していたキースお兄さまの声!

 慌てて扉に向かうと、ガチャリと扉が開いた。そして、ぎゅっと抱きしめられた。

 ギブギブギブッ! お兄さま、力が強すぎる! バンバンと背中を叩くと、キースお兄さまはハッとしたように力を緩めてくれた。あー、びっくりした!

「聞いたよ、リディア。どうしてこんなに可愛いお前が……」

 今にも泣きそうなお兄さまの声に、思わず苦笑を浮かべる。

 キースお兄さまは私よりも二歳年上で、このゲームの中ではリディアの断罪後、ちらっとしか出てこなかったのよね。

 大学に進学して、留学先の国でこの騒動を知ったお兄さまの心情はいかに。

「……アレクシス殿下のお心はすでにフローラさまに移ってしまいました。そんな方の妻になるつもりはありません。ですので、婚約破棄は当然の結果ですわ。心配なさらないで、キースお兄さま」

 本当、当然の結果よ。
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