【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
 それとほぼ同時に、玄関の扉がノックされる。

 ――ああ、迎えがきたのね。

 ローレンとチェルシーが玄関の扉を開ける。

 そこにいたのはやはりフィリベルトさまで――……いつも着ていた制服ではなく、黒のタイトな服に、金色の刺繍がとても似合っていた。もしかしたら、ユミルトゥスの制服なのかもしれない。

 彼にはこの制服のほうが似合っているんだな、と頭の片隅で思ったけれど、私は気を取り直してフィリベルトさまに挨拶をした。

「ごきげんよう、フィリベルトさま。迎えにきてくださってありがとうございます」
「おはようございます、おふたりとも。もしや、待たせてしまいましたか?」
「いや、我らが早めに玄関にきていただけだ。フィリベルトさん、リディアをよろしくお願いします。ローレンとチェルシーも」
「はい、大切にお預かりします」

 フィリベルトさまはすっとお父さまに頭を下げた。留学が決まるまで、フィリベルトさまはこの屋敷まで熱心に足を運んでくれて、お父さまともいろいろ話して今ではすっかり仲良くなったみたい。

 そして、熱心なアプローチに私がうなずいたことで、私たちの関係は一応、婚約者ということになっている。

 アレクシス殿下との婚約は無事に白紙になったし、お父さまも陛下も私とフィリベルトさまの婚約を了承済み。

 フィリベルトさまのご両親には、彼自身が説得したらしく、ユミルトゥスについたらまず、彼のご両親に挨拶をする予定。

 学園は寮があるらしいから、ユミルトゥスでは寮生活の予定。フィリベルトさまは家から通うのかしら。
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