【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

まるでジェットコースター

 そこにいたのは――竜だった。

 いやうん、竜の国っていうくらいだし? 竜がいてもおかしくない……おかしくない、よね?

 竜の背には鞍みたいなのがつけられていて……まさか、とフィリベルトさまを見る。

「あの、まさか……」
「そのまさかだ。察しがいいな、リディア嬢」

 うそぉ、と内心つぶやく。

 ただ、ワクワクとした気持ちが勝っていることは否定できない声色だった。

 くっくっくとフィリベルトさまが喉の奥で笑う。……この人、猫を被らなくなったわね。

「触ってみてもいいかしら? 名前は?」
「その子はムーンだ。月のように淡い色をしているだろう?」

 ……たまに濃い黄色だったり赤かったりするけどね!

 ドキドキと胸を高鳴らせながら、寝そべっている竜――ムーンに近付いた。

 ムーンは私に気付くと、目をぱちりと開けて、じっとこちらを見る。

「初めまして、ムーン。私はリディアと申します。……触れてみても、いいですか?」

 ムーンは私が伸ばした手に、自分の頬をすりっと触れさせてくれた。冷たくて気持ちいい。そっと撫でると、気持ちよさそうに目を閉じた。

 な、なんて可愛いの……!

 優しく撫でていると、後ろからぎゅっと抱きつかれた。フィリベルトさまだ。……ええええ!?

 な、なんで私、彼に抱きしめられているの!?

 頭と心がパニック状態になっていると、ムーンは私の手から離れてしまった。
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