【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「ここは……?」

 草原の中に、竜が次々と着地する。

 ローレンもチェルシーも、ジェットコースターの経験なんてないだろうし、大丈夫かな? と不安になって彼女たちの姿を探す。

 ふらふらとした足取りの彼女たちを見て、心配になってフィリベルトさまを見上げた。彼はぱっと私の腰から手を離したので、ローレンたちに声をかけにいくために近付いた。

「ちょっと、大丈夫?」
「いえ、ちょっと、なんか、むりです……」
「お、おなじく……」

 初めての経験だったものね。無理もないわ。

 ぽんぽんと彼女たちの肩を叩く。フィリベルトさまの他にも男性が数人、女性が数人いて、初めて竜に乗る私たちを、安全に運んでもらったとは思うのだけど……。

「空からの景色は楽しめた?」
「リディアお嬢さまは、楽しめましたか……?」
「ええ、楽しめたわ。とってもきれいだったのよ」
「……それは、よかったです……」

 ハンカチで口元を押さえるふたりに笑顔を見せると、彼女たちは羨ましそうに私を見た。

 ジェットコースター好きの私はともかく、ふたりにはきつかったのだろう。

 観覧車くらいゆっくり動くものなら大丈夫かしら、と考えていると、女性が私に話しかけてきた。

「すごいですね、初めてで空からの景色を楽しめるなんて」
「そうですか?」
「ええ。わたし、初めて竜に乗って飛んだときは、意識を失いましたもの」

 ……空の上で、失神?

「だ、大丈夫だったのですか……?」
「先輩に助けてもらいました……」

 えへへ、と笑う女性はとても愛らしかった。

 こんなに可愛らしい方も、竜に乗って空を()け巡るのね……なんだか感動してしまう。
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