【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。
「ここで少し休憩しよう。首都にはまだ遠いので」
「ユミルトゥスって、こんなに遠い国だったのですね……」

 こちらに近付いてきたフィリベルトさまに、しみじみとつぶやくと、彼は「はは」と軽く笑う。それに合わせるように私も微笑む。

 そんな私たちの様子を、みんなが微笑ましそうに見ていた。

「クッキーありますけど、食べますか?」
「いただいてよろしいのですか?」
「もちろんです」

 女性がクッキーを取り出して、差し出してきた。クッキーを見ながら首をかしげて問うと、女性はにっこりと微笑んで渡してくれた。

「リディア嬢、こちらへ」
「?」

 フィリベルトさまに手を引かれて歩く。草原の中に赤やピンクの花々が咲いているところがあって、とてもきれい。

 わぁ、と声を上げると、フィリベルトさまがハンカチを取り出して地面に敷いてくれた。

「どうぞ、お座りください」
「あ、ありがとうございます」

 いいのかな、と思いながらも、ハンカチの上に座る。

 クッキーの包みを開けて、フィリベルトさまに差し出した。

「甘いもの、平気でしたよね?」
「ええ、いただきます」

 フィリベルトさまがクッキーをひとつ手に取って口に運ぶ。私もクッキーを食べた。

 サクッとした軽い食感にバターの風味と砂糖の甘さ。うーん、美味しい! こういう甘いものって幸せな気持ちになれるわよね。
< 69 / 146 >

この作品をシェア

pagetop